【没後70年 南薫造/まさにニッポンの印象派】
@東京ステーションギャラリー 2021.02.20〜04.11
「オカリナの音を思わせる人柄」と、
マンドリン仲間に富本憲吉は南のことをそのように語ったといいます。
先日、100歳で現役の画家、野見山暁治の展覧会を観ましたが
その経歴に野見山が最初に師事したのが南薫造で、
南が最初に師事したのが岡田三郎助というつながりを知りました。
画家というのは個々の活動というイメージがありますが
それでも初めの一歩は誰かに師事して、
やがて自分のスタイルを模索して確立し、
師事した先生のスタイルとは全く違うものになっていくのがおそらくは
普通のことなのだろうと思いました。
南は油彩が西洋画の主流の中でイギリス留学時代に水彩画に親しみます。
ワタシはどちらかというと水彩画のサラサラした水の感じが好きで、観ていて安心します。そして南の油彩画はどこか水彩画のようで、やさしいです。
『春[フランス女性]』の花柄の壁紙と横顔の女性の絵は、
しばらく目が離せないほど美しいと思う絵です。
戦時中は海岸線のスケッチが禁じられていて『瀬戸内海』や『生家の近く』などは戦争が終わった自由を噛み締める画家の開放感が感じられて、観ているコチラまで清々しい気持ちになる作品です。展の最後の部屋で観たせいなのか、何かとても救われた気持がしてました。
あと、とても興味深かったのが絵葉書の展示ケースです。
南と親交のある画家仲間とのやり取りの絵葉書が並んでいて、そのどれもがまず絵ありきでハガキの余白をまず絵を描いて、僅かな余白に近況なりを書く、というルールでもあるのかと思うほど、そのどれもが素晴らしいかったです。
なかでも白瀧幾之助のハガキが印象に残っています。
決して有名な画家ではないかもしれないけど、
南に限らず、むしろ、なんで知らないでいたんだろうと思う日本画家も多く、
もっと紹介される機会が増えたらウレシイな、と思います。
【ー祈りと宇宙ー 小倉尚人展】
@大阪高島屋7階グランドホール 2021.03.24〜04.12
世に知られることなく、知られそうになるとその身を隠して、なお画業に励んだ画家・・・というイメージを持ちました。
それと曼荼羅を抽象的に捉えた作品にとても興味を持ちました。
描くことがそのまま修行のように
生きることがそのまま描くことでした。
30歳手前で不治の病を宣告されます。
そして欅の木の下で誰かに後ろから身体を掴まれるような感覚。
たとえばそれは欅の精霊に・・・でしょうか。
ちょうど曼荼羅を製作中で、
もはや生きる死ぬを考えなくなった頃の不思議な体験。
その欅を描いた絵は『五日市街道の欅』となり、
ちょうど下から見上げる角度で書かれています。
本当にそんな体験が起きるかもしれない・・と思わせる樹齢の長い欅です。
小倉は欅から何かのメッセージを受け取ったのかもしれません。
小倉は完成した作品を菩提寺のあるお寺に数多く納めています。
ここの部分にワタシには何か若冲を思わせるものがあります。
名声や収入とかではなく、描くことそのものを大事にしていたこと。
そして信仰とは違う祈りの気持ち。
曼荼羅を納めた福島県岩尾寺の修行では曼荼羅のうちの一枚に集中して瞑想をしていると、やがて別のものが見えてくるそうです。これがそうなのか?宇宙なのか?と感じるのだそうです。なんだかスゴいですよね☆
ワタシも会場でやってみましたが・・・
まだまだその境地には達してませんでした💦
「まる」の形は初めて絵を描くときに描く最初の形だそうです。
そして曼荼羅の漢訳は円・球体を表しているのだそうで、
この二つはどこかで繋がっているように思いました。
病の宣告から約30年・・・小倉は、ついに体調を崩します。
自らの余命を悟り、30年ぶりに病院へ行くと、その数ヶ月後に亡くなります。
「30年ぶれなかった」「30年、時間をもらった」と残しています。
もし、途中で絵をやめたり、描いても俗にまみれたりしていたら、
欅の精霊との約束は果たされず、こんなに長くは生きられず絵も描けず、
病に蝕まれて人生を終わっていたかもしれないな〜と、
「もしも」のもうひとつの世界を想像してしまいます。人の生き死にとは何に支えられているかで変わるのだろうな・・と思いました。
描いた本人はいなくなっても作品は残ります。残した作品を観ることで画家の人となりを知ることができ、それを観て、またいろいろ思ったり考えさせられたりします。今展はそんなことをより強く思うことになった機会でした。
🟩Eテレ/びじゅチューン!3月29日
「委員長はヴィーナス」
放送時間が変わりました。
月曜午後11:15
(再放送)金曜午後03:55/隔週金曜日午前10:10/翌週月曜日午前05:50
Eテレの5分番組・・なんて5分は長くて濃ゆいんでしょう☆
井上涼さんが美術作品をひとつモデルにして
作詞作曲うた、アニメーションまで手がけて紹介されています。
気になる渋めのコーラスは、ジョリー・ラジャーズです。
興味が湧いたら放送ご覧になってみてくださいね☆
モデルになった作品は
ひとめ見たら忘れられない美しい絵画ですよね。
なぜに貝殻に乗って登場?
ゼピュロスの風に吹かれて
フローラが上着を用意して
もしやどこかへお出かけ??
そう・・・行く先は学校、ヴィーナスは委員長。
さすがに貝殻での登校は校則違反💧・・・だよね。
「本当は制服なんて着たくないの
裸でいたいのよ生まれたままの」
ヴィーナスは何も身につけてない方が
かえって普通だし、美しいですよね。
まして制服なんて!いちばん似合わないかも?
それも卒業までのガマンね。
🟤【喫茶ユトリロ】(箱根湯本)
美術館併設ではありませんが、
いわゆる画廊喫茶と呼ばれる部類のカフェです。
コチラとはコンセプトがちょっと違うようです。
でも同日のモーニングはルノワールさんでコーヒーをいただきました。
コチラのご主人が店名でもある画家『ユトリロ』を大変お好きでいらっしゃるとのことで店内の壁には数々の絵画が飾られています。
場所が箱根ということもあって一見、入りづらい雰囲気もないわけではありませんが「えい!」と入ってしまえば、そこは天井も高く静かでくつろぎやすいソファ椅子とほのかに流れる音楽で、時間の許す限り、お店の雑誌を見ながら過ごせる本当に素敵な場所です。
せっかく来たし・・お腹もペコペコだし・・と、
きのこソースのハンバーグランチにケーキセットをオーダーしました。
ケーキセットのケーキに迷ったあげく、あまり店の方に意見を求めることはないワタシでもつい、とくにオススメってドレですか?と訊いてしまいました。
だいたい目星をつけていたケーキ、[アップルケーキ]がよく出ます〜イチゴショートも・・・あ〜それ以上きくと、また迷うので〜と心で思って、すかさずアップルケーキをお願いしました。
箱根価格にしては、これだけ食しても他店のランチ一食分よりリーズナブルにいただける上に、このゆったり感はなかなかないです♪
ふと見上げるとユトリロを始めとする絵と目が合い、何よりお店のスタッフさんが良い空気を作っているのはいうまでもないでしょう。
また訪れたいカフェが増えてウレシイです⭐︎
【筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳までー】
@すみだ北斎美術館 2021.02.09〜04.04
「絵師の魂、筆に宿る」
英語にすると【The Soul of the Brush】となるそうです。
なんとなくですがカッコいい〜☆
浮世絵といえば、版画を連想しますが本来、絵師は絵筆をふるった一点ものの肉筆画の方が先だそうです。ワタシもてっきり版画が主流でレアな形として肉筆画があると思っていましたので、版画はたくさんの人に行き渡る方法として今でいう出版物なのでしょうね。
すみだ北斎美術館は今回、初めて行く美術館です。
可愛らしい公園に隣接したモダンな形で、とても楽しみにしていました。
ガードマンさんからして「いらっしゃいませ。どうぞ、お楽しみください。」というお声がけにすっかりファンになりました。
すみだ・・という地名は広いのでしょうか?
すみだ水族館は浅草なので、その近くかと思えば、こちらの美術館は最寄り駅は両国・・・地図を見たら明らかなのでしょうが、ワタシには全然ちがうところに来た感じがしています。
でも、館の休憩室から思わずスカイツリーが近くに見えたので、やっぱりココは「すみだ」なんだな〜と思いました。
さて・・・肝心な展示についてですが、
入館して、いきなり岩佐又兵衛から始まるのですね✨
これには意表を突かれて、それがまた嬉しかったです。
このあと熱海まで又兵衛の展覧会を行く予定でいたので、よりテンションが上がりました。又兵衛は細かな描写が本当に丁寧で美しく、もともと描くことが好きでなければこんなに描けないだろう、と思わせる画力があると感じます。
美しい中に時々、おどろしいまでの残酷なシーンも又兵衛が生きた自身の体験を描いたに過ぎないという、武士の家系の人間が絵を描かなければ生きていけなかった・・そんな時代の絵師でした。
驚くのはそのように肉筆画を描いていたのは何も有名な絵師ばかりでなく、むしろ無名な絵師が多かったそうです。
作者不詳・・・となっていても、これがなんで作者わからないの?と思うほどひとめで素晴らしいと思う出来栄えの絵で、むしろ誰か名前を知りたくなりました。無名の町絵師は落款を伴う作例は少ないらしく、おそらく手がかりはナイに等しいのでしょう。
今回の展覧会で本当に間に合わなくて残念に思ったのは
今でいうコラボで描かれた一枚で『青楼美人繁盛図』です。
北斎がかつていた勝川の絵師と敵対していたとされる歌川の絵師と共に描いたもので、いろいろあったとはいえ、こうして一つのものを描き上げるだけの交流があったということがわかる作品で重要だと思います。
ん〜〜これはぜひ観たかったです!
また、いつか。
あと、気になった絵師がいました。
北斎の門人で、魚屋北渓(ととやほっけい)という絵師です。
今回、展示された『杜鵑図(とけんず=ホトトギス)』は、その新発見されたものだそうで、とても印象強かったです。以前にもどこかの展覧会で名前がおもしろかったから覚えているのですが展示があって、その時も北斎の門人にこんなに上手い人がいるんだな〜と思ったと記憶しています。
常設展も充実していて楽しめました。
また来ます☆
【千代紙 花鳥風月 ー日本橋・和紙舗「はいばら」の聚玉文庫コレクションより】
@佐野美術館 2021.02.20〜04.04
どこかのミュージアムショップで見つけて一目惚れしてから
「はいばら」さんのレターセットを愛用しています。
今回こちらの貴重なコレクションを観せていただけるということで
しかも前から行きたかった佐野美術館さんに向かいました。
そんなに広い美術館ではないのですが観覧しやすいところが何よりです。
展示室に入った途端、いきなり美しい千代紙や短冊が素晴らしい保存状態で展示されていました。
一枚一枚、すみずみまで目を凝らしながら観せていただきました。
少しすすむと、ちょっとずつ「はいばら」さんの本当の凄さを知り、
なかなかの老舗であることはもちろん、
日本を代表する画家との関係も驚きの連続でした。
まずは河鍋暁斎。展示されていた千代紙の柄を以前に訪れた埼玉県の暁斎美術館で見ていて、まさか!と、びっくり。これは「はいばら」さんとの仕事だったのか〜と本当に驚きでした。
そして、竹久夢二もいました。夢二は自身が小物屋で使う商品に「はいばら」さんが出している雁皮紙を愛用している繋がりでデザインを提供しています。
浅草あたりに行きますと、可愛らしいデザインはもちろんのこと、通常のサイズより小さかったり形が変わっていたりするポチ袋をたくさん見かけて、ついつい何種類かお買い上げしたことがあります。それがそのまま展示ケースにあるようでテンション上がります☆
熨斗の種類も多く、一枚の印刷した用紙から熨斗の部分を切り取って使用するというタイプで、かつては日常的に使うもので、家にいつも予備があったというものなのでしょうね。大きさやきめ細かなデザインで、あの方にはこの熨斗・・・など、チョイスしていたのかな〜と想像しました。
1年12ヶ月にちなんで12枚で1セット売りされていた短冊がありました。
和歌や俳句を書いていたのでしょうか、文字が入るとまた景色が違って素敵だったと思います。
どれも見逃せないもの貴重なものばかりで素晴らしい展覧会でした。
そしてミュージアムショップでは、その「はいばら」さんのグッズが本当にたくさん並んでいて、その中に佐野美術館さんとのコラボ商品であるミニクリアファイルがあり、これはもうお買い上げしました。あと、お馴染みの蛇腹タイプで、ちぎりやすいミシン目が入ったメモ用紙もお買い上げしました。他にも見ているだけで楽しくて欲しいものが盛り沢山で困るほどでした。
日本橋の「はいばら」さんにもこれを機会にぜひ訪れたいと思います。
なんと、日本橋高島屋さんの2軒隣という、そんなところにあったなんてまったく見えてなかった・・・まぁ高島屋さんはいつも地下階から行くので仕方なかったとしときましょう☆
🟩Eテレ/びじゅチューン!3月24日
「書記に必要なギャルの精神」
※一部放送時間が変更されています。
月曜午後11:15
(再放送)金曜午後03:55/隔週金曜日午前10:10/翌週月曜日午前05:50
Eテレの5分番組・・なんて5分は長くて濃ゆいんでしょう☆
井上涼さんが美術作品をひとつモデルにして
作詞作曲うた、アニメーションまで手がけて紹介されています。
気になる渋めのコーラスは、ジョリー・ラジャーズです。
興味が湧いたら放送ご覧になってみてくださいね☆
今回のモデルとなった作品は今から4000年以上前に造られたという
『古代エジプト「書記座像」』です。
何か大切なことを書き留めている様子を捉えた作品です。
エジプトの特徴的な目元にぐるっとアイラインと
カラーコンタクトを入れているような瞳の輝き。
書記とは?
さまざまな出来事を文字にして書き起こし記録する人のこと。
書記することにかけては追随を許さなくても
打ち合わせの議事録はヒエログリフ・・・読めなかった。
ヒエログリフとは?
古代エジプトで使われた文字のひとつで絵のような形をしている。
はるか昔の文字だけど、文字で残している以上、
いつか読める日が来るのでしょう。